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名古屋地方裁判所 昭和45年(ワ)469号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、亡伊藤みよが昭和四三年一月一一日午前一〇時一八分ごろ、名古屋市中区栄一丁目二三番一二号先の車両の交通のひんぱんな道路上を自転車で西から東へ横断中、北進してきた訴外堀場運転の普通貨物自動車(名古屋一こ八〇四六)に衝突されて跳ね飛ばされ、その結果、頭蓋庭骨折により即死したことは当事者間に争いがなく、右事実に<証拠>を総合すれば、本件事故現場は、名古屋市中区栄一丁目二三番一二号先を南北に通ずる国道一九号線道路(通称伏見通り)上であつて、該道路は、総幅員が約50.5メートルで、幅2.5メートルの中央分離帯をもつて分離され、その左右(東西)にはいずれも幅一七メートルの車道と同じく七メートルの歩道のある見とおしのよい直線道路であつて、車道は車両の通行が極めてひんぱんであり、かつ、右事故現場附近で西方からの幅員約一〇メートルの道路と東方からの車道のみの幅員約九メートルの道路とそれぞれT字型に交差している関係上、中央分離帯が同現場附近で約二四メートルにわたつて切れていて車両等が右国道を東西に横断(歩行者の横断のためには右事故現場のすぐ南方に歩道橋が架設されている)することが可能になつていること、本件加害自動車の堀場運転手は、前記日時ごろ、前記普通貨物自動車を運転して前記国道の西側車道の中央分離帯寄りを時速約五〇キロメートルの速度で、自車の左前方を進行する大型乗合自動車(名鉄バス、以下単に名鉄バスという。)の右後方に近接して北進し本件事故現場の手前に差しかかつたこと、右両自動車は、いずれも右事故現場の南方約三〇〇メートルに存する信号機の設置された交差点を最先頭で発進してきたため、その前方に先行車のない状態で進行してきたこと、したがつて、名鉄バスとしてはその前方の見とおしを遮るものはなにもなかつたけれども、堀場運転手の自動車からはこの名鉄バスのため左前方の見とおしがきかなかつたこと、ところが、このような状態で右両自動車が本件事故現場附近に差しかかつた際、名鉄バスが急に減速し始めたのであるが、これを見るや、堀場運転手は、加速して同バスを追い抜こうとする余り、その動静を顧慮することなく、その前方の交通の安全確認の挙に出ないで、漫然と制限速度を約一〇キロメートルの速度に加速して追い抜きを始め、名鉄バスとほぼ併進の状態になつた途端、自転車に乗車して左(西)方から右(東)方へ、堀場運転手の自動車が進行してくるのに一向気付いた様子もみせないで横断中の被害者みよを左斜前方約21.7メートルの地点に始めて発見して危険を感じ、急ブレーキをかけたが、時すでに遅く、自車前部を右みよの自転車に衝突させて同女を跳ね飛ばし、その結果、同女をして前記傷害により死亡するに至らせたことが認められ、<証拠説明略>右認定の事実に徴するときは、堀場運転手としては、同人運転の自動車の左前方近くを進行する名鉄バスに遮られてその前方、すなわち自車の左前方の見とおしがきかなかつたのであるから、同バスの動静に注意を払い同バスが減速を始めるにおいては、前方に障害物の存在する場合のことを考えて、同車の前方の交通の安全を十分に確認して進行すべき注意義務があるのに、同運転手は、この注意義務を怠り、かえつて制限速度を超える速度に加速して名鉄バスの追い抜きを開始した過失があり、この過失により本件事故を惹起したものであることが明らかであるが、他方、被害者みよとしても、車両の進行が極めてひんぱんで、かつ片側車道だけでも一七メートルもある幅員の広い国道上を、自転車に乗車して横断しようとするのであるから、あらかじめ、先ず、右方から進行してくる車両の多寡はもちろん、その車両までの距離、速度および進路などの状況をよく検討のうえ、車両の正常な進行を妨げないで、安全に横断することができるかどうか確認しなければならないのに、先行車のない状態で進行してきた本件原告自動車や名鉄バスの前方を横断中であつた前記認定事実にかんがみれば、同女は、先ず、右方から進行してくる車両の進行の妨げにならないように、その流れの切れ目を捉えて道路の横断を始めたものであることを推測するにやぶさかでないけれども、前記認定のとおり、制限速度内で進行してきた本件加害車とほぼ同様の速度の名鉄バスが、本件事故発生の直前、突如、減速し始めた(右減速措置は、本件事故発生直前の状況上、同バスの運転手がその進路前方に障害物、すなわち横断中の本件被害者を認めたために採つたものと解するほかない。)ことと、被害者みよが本件加害自動車が接近してきているのに、なかなかこれに気が付いた様子をみせないで横断を続けたことなどを考え合せると、亡みよは、自転車で前記国道を横断するにあたり、前叙の右方の交通の安全確認を十分になさないで、本件加害自動車の進行してくるのを看過したか、もしくはこれを認識していたにしても、同自動車までの距離やその速度のいずれかまたは両者の判断を誤つたことにより右加害自動車の通過前に横断できるものと軽信した落度があるものと解さざるを得ないのであつて、たとえ、名鉄バスが横断中のみよを認めてその速度を加減し、同女に同バスの前方を無事に横断する余裕を与えたにせよ、そのことの故にみよに全く過失がなかつたとはみなし難く、しかして、堀場運転手と亡みよ双方の叙上過失の割合を比較考量するときは、前者が7.5割、後者が2.5割と認めるのを相当とする。 (岡村利男)

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